2017.06.05
人は不要なモノを買う
不要なモノで価値を手にいれる
「人々は4分の1インチ径のドリルが買いたいのではない。4分の1インチ径の穴を開けたいのだ。」
これはハーバードビジネススクール教授、セオドア・レビットの言葉です。短い言葉ですが、仕事の本質を見事に捉えているのではないでしょうか?ドリルを買う人はドリルそのものが欲しいわけではなく穴を開けたいだけです。ですから、最初から穴が開いていたら、もしくは穴自体が必要なくなればドリルは不要になるのです。
このようによく観察してみると、私たちが普段購入しているモノの多くは本来不要なものばかりです。私たちはその不要なモノを利用することで別の「価値」を手にしているのです。そして、その「価値」が別の何かで今より便利に、安く手に入るのであれば、今購入しているモノはまさしく不要になります。
例えば、音楽や映画などのCD、DVDメディア、新聞、雑誌などの紙媒体など、ネットを通じて便利で安くダウンロードできるものの多くは衰退の一途を辿っています。人々が欲しいのは情報であってメディアではないのです。タイムリーで安く、加えてかさばらない、おまけにハードウェアを選ばないのですからこの流れは当然といえます。
あなたのスキルが不要になる日
こうした考え方は「働く」という行為自体にも当てはまります。前回のコラムでお伝えしましたが、今から10年から20年で47%の仕事がロボットやAIにとってかわられるというオックスフォード大学の研究にもある通り、同じ成果が上がるなら24時間休憩もなく、文句も言わずに食料も給料もなしで働き続ける労働力があれば、それを選択する事は必然です。
そうやって、あらゆるものが合理化された社会の中で、「働く」という行為はどのように変化していくのでしょうか?その時、働く人はどんなスキルを求められるのでしょうか?ロボットやAIにできない事とは何なのでしょうか?
もしドラで話題になり知っている人も多いと思いますが、マネジメントの生みの親と言われる社会生態学者のピータードラッカーさんがそのヒントとなるこんな事を言っています。
『未来について知っている事は二つしかない。「未来を知る事はできない」、そしてもう一つは「未来は今日存在するものとも、今日予測するものとも違う」という事である。』
そして次のように語っています。
『未来を予測する最良の方法は自ら創りだす事である』
次世代の仕事の多くは、「未来を自ら創り出す仕事」かもしれません。