2018.03.08
働き方改革って何なの?パート1
【今、話題の働き方改革】
最近ニュースで目にしない日は無いくらい話題になっているのが「働き方改革」。しかし、この法案が実際どんなもので、働く人にどんな影響を与えるものなのかはあまり知られていません。そこで今回のコラムではその内容をできるだけ簡単にご紹介したいと思います。
内閣府の調査によると、現状の出生率が継続した場合、2050年には生産年齢人口が4228万人と、現在の3分の2に減少するというデータが出ました。労働力はその国の国力であり、日本国として解決しなければならない重要な事案の一つと言えます。働き方改革は少子高齢化に伴って起こる労働力不足に対する対策として発案されました。
その骨子は、
1.女性や高齢者が働きやすい環境を作ることで働く人を増やす
2.ワークライフバランスによって生活の質を高め出生率を高める
3.派遣社員の待遇を是正し収入を高める
の3つを実現するための改革です。
その具体策として、
・長時間労働の是正
・同一労働同一賃金による非正規社員の抑制と処遇改善
・職業選択の幅を広げる副業解禁
・テレワークなどの柔軟な勤務体系の推進
などの策が検討されています。
【働き方改革の課題】
そんな働き方改革にはいくつかの課題があります。
・生産性を高められない企業は淘汰される
働き方改革が実現した時にしっかりと利益を残すためには生産性を高めて行かなければなりません。働き方改革は生産性を高めるための政策ではなく、それができない会社は淘汰されて良いという政策です。まさに生産性を高められない企業は誰も助けてくれないし生き残れないと言えます。
企業が生産性を高めなければならないことは今に始まった事ではなく、当たり前にやってきた企業からすれば何の問題もありません。しかし、自社の顧客にその影響が及べばそうも言っていられません。また、業種特性として生産性が上がり難いサービス業などは今後、ますます人材難に陥ることが予想されます。
・働くことへの価値観が変化する
「仕事は労働」というドライな価値観が若い人に誤って伝わる危険があると思います。会社と労働者がギブアンドテイクのみの関係になると人のお役に立ちたいと言った健全な社風が育ち難くなるのではないか?と感じます。本来であれば、これらの取り組みは会社と現場が協力して作り上げなければいけないものです。そうした良好な関係を構築できない企業はやはり淘汰されていくでしょう。
・優秀な人材の流出によるサービスの低下
最近、ネットにおけるヘッドハンティングサービスが急成長しています。このおかげで大手企業を中心に優秀な人材へのアプローチが活性化しています。結果的に人件費の高騰、労働環境の格差が明確になり、中小企業はますます人材難に陥るのでは無いかと心配しています。
特に労働生産性の低い業種、業態は待遇が改善されず、人が集まり難くなります。結果的にコストは跳ね上がり、逆にサービスの質は低下してしまうでしょう。実際、飲食店などに行くと外国人アルバイトの方が多く働いていますが、言葉の壁や習慣の違いなどで現実にサービス力が低下していると感じることが多いです。
・残業抑制によって給与が下がる
残業が減ることは結構なことですが、当然ながら残業代も減少します。働く人にとっては手取りが減ることになりますので、大手を振って喜べる状況ではありません。大手企業には残業の抑制と給与アップの両方を要請していますが、ただでさえ厳しい競争環境にいる中では一筋縄ではいきません。
そうしたことに対応するために、ある会社では残業が減って成果が変わらなければ、減った分の残業代を賞与で返すという取り組みで、残業の減少と報酬の維持を実現している会社もあるそうです。
・フルタイム社員と短時間勤務、在宅勤務の業務バランス
短時間勤務や在宅勤務などは働く人の幅を広げる重要な施作です。我が社でもそうした働き方を取り入れて成果をあげていますが、この働き方が広がるとフルタイムの社員さんは不平等を感じるようになります。
実際にあった話ですが、ある会社で結婚を機に短時間勤務になった社員さんがいます。給与は実績に応じて支給される仕組みですので、短い時間でも実力次第で今まで通りの給与が受け取れます。問題は、みんなで手分けしている間接業務に関わらないという点です。掃除や電話応対、スタッフ会議や勉強会、資料の作成など、多くの分担作業に参加しなくなります。そうすると普通に働いているスタッフから「それなら私も短時間勤務がいい!」という意見が噴出したというのです。
この政策が社会に浸透する中で、こうした問題も解決して行くと思うのですが、会社の業務のあり方や役割分担に対する考え方を見直すきっかけになるかもしれません。
・副業による集中力の欠如や労災問題
一人の人間が同時並行で複数の仕事をこなすことが本当にできるのでしょうか?少なくとも私にはできません。また仕事にはトラブルがつきものですが、未解決の問題を抱えながら別の業務に従事することはとても効率が下がると思います。
そもそも残業ができなくなって、その分の賃金を慣れない他の業務や職場で得るという考えは本末転倒な気がします。また過労によって何らかの事故が発生した場合、その責任の所在はどこにあるのでしょうか?
このようにまだまだ未解決な課題が山積しています。
では働く人がこれらの課題を乗り越えて生産性を高めるために何をしなければならないのか?は次回お送ります。お楽しみに!